労働法務に関するニュースが今週は多く報道されていました。一つは、アルバイト秘書に賞与がなかったことを不合理とまで言えないとした最高裁の判決(10月13日)、もう一つは、日本郵便の契約社員らが正社員との待遇格差について訴え、継続的な勤務が見込まれる契約社員の労働条件が正社員と違うのは「不合理」などと判断した最高裁判決(10月15日)です。じっくり判決を読んで検討してみたいと思っていました…が、全然間に合いませんでした。気を持たせて(持ってない?)すみません。
私は司法試験の選択科目が労働法で、労働法を担当していた教授の大ファンでもあったので法科大学院時代は特によく勉強しました。勉強の中心は裁判例を検討し、規範を覚えることでしたが、ほかの分野と比べて判決に「時代」が凝縮されているなと常々感じていました。裁判所が時代の「空気」をつかんで規範を作り、それが定着していく感じというか。読んでいないのにコメントしてはいけませんが、報道されている論点は私たちの働き方が変化した結果出てきたテーマであり、これらの最高裁判決も「この時代は…」と語られる対象になるのだろうなと思います。
さてこのように「時代」は変わるわけですが、変わると言えば「印鑑」についても最近話題になりましたね(ちょっと強引)。政府が婚姻届や離婚届の押印の廃止、オンライン化を検討していると明らかにしたとか…。最近はコロナでテレワークを推進するためもあり「脱はんこ」と繰り返し言われ、総務省も『押印に関するQ&A』を出したりしています。はんこ文化終焉の予感がします…。
確かに気楽に押す場合の印鑑には、日本人が感じているほどの「法的意味」はないとは思います。最近電子契約を使うことも何度かありましたが(そして導入を検討中)、確かに便利ですし…。
けれど、印鑑登録証明書までつける場合の印鑑はやっぱり少し特別な意味を持ちますよね。印鑑登録証明書なんかもいずれなくなってしまうのか、意外となくならないのか。
中国でも印鑑は重要な意味を持っており、来年1月から施行予定の中国民法典でも契約は署名、捺印、拇印のどれか一つがなされたとき成立すると規定されています(法490条)。印鑑を押すだけで契約成立です。しかし、中国には日本のような印鑑登録証明制度がありません。この話を聞いた時、「本当なの?じゃあどうやってその印鑑が本物だと証明できるの?相手方が権限ある人だと確認は署名では無理じゃ…」と、中国律師の友人を問い詰めてしまいました。中国での契約の場合、契約締結に至るまでに多くの人が登場することが多く(コンサル会社、通訳、関係会社、元従業員などなど…)、誰が取引の本当の相手方なのか判断するのが困難という事態がよく起こります。印鑑登録証明書があればかなりの安心感につながると思うのですが、ないから期待もないそうで、一般的には「署名と印鑑をダブルで取る」、「あえて相手方の社屋に乗り込んで契約締結する(なるほど…)」、「専門家(弁護士等)が印鑑登録部門に行って確認を申し込む」などで対応しており、証明書などないからそもそも期待もしていないという感じのようでした。ということは‥ないならないで、慣れるのかも。。
いずれ私も「ちょっと前まではアレを押すときめっちゃ気合入ったもんだけどね、アレなんていうんだっけね。」とか言うようになるのかもしれません。
何か象徴的な時代の真っ只中にいる私たちですが…また元気に来週お会いしましょう。